恋−raining



――甘い香り。

「ケ−キみたいなにおいがする」

葉が、アンナの髪に顔をうずめて言った。

「…バニラの香りよ。あんたって本当に語彙が貧困なんだから」

葉に抱きしめられたままで、アンナも呟く。 

雨の日の午後。
二人で住むには少し広すぎる、元民宿・炎の一室。雨音だけが響く。

何度経験しても、とアンナは思う。

ちっとも慣れやしない…

葉の手が、アンナの髪をそっと撫でる。

――高鳴る心臓の音が、葉に聞こえてしまうんじゃないかと心配になるくらい。
あんたに触れられるといつも気が遠くなりそうな程あたしがドキドキしてるなんて、あんたは知らないんでしょうね…

全身を包む葉の体温に酔いながら、アンナは静かに目を閉じた。

まるで二人を外の世界から隔絶するかのように、雨がその激しさを増してゆく。





腕の中のアンナの温もりは、葉の心を掻き乱した。
葉は抱きしめる手に力を込めた。彼女の熱を、吐息を、存在のすべてを、その腕で確かめる。
甘い『バニラの香り』が葉の鼻をくすぐった。

――やっぱり、ケ−キみたいだ。

どうしようもなく誘われてしまう、その香りも、触れた柔らかさも。

そう思いながら、彼女の髪に触れた。
アンナの肩が微かに震える。

掌で頬に触れると、彼女は伏せていた目を上げてこちらを見つめた。
吸い込まれそうなくらい深い色に澄んだアンナの瞳が、まっすぐに葉を見る。

こうして見つめ合うのも、初めてじゃない筈なのに。

不思議な痛みが胸を襲う。

「アンナ…」

葉は、そっと気持ちを口にした。

「…愛してる…」


うるさいくらいの雨音の中、その言葉は本当に小さな囁きだったけれど。
アンナは嬉しそうに微笑んで、目を閉じた。

葉が顔を近づける。
互いのいとおしさを伝え合う様に、優しく。二人は唇を重ねた。


ぎこちない緊張感は消えて、心地良い柔らかさと安堵感が二人を包む。暫くして、ゆっくりと唇を離すと、どちらのものともつかない吐息が漏れた。

アンナが、そっと葉の顔を見つめた。
ちょっと照れた様に葉がアンナを見つめ返す。

…時々、こんな風に確かめ合わないと。

信じていても、不安になるから。
膨れ上がる気持ちが、その行き場を探して騒ぎ出す。


「…あたしも」

アンナが、今度は自分から葉のほうに手を伸ばしながら、言った。

「好きよ。愛してるわ、葉――」






ヘッドホンの次くらいに書いた物で、視覚・聴覚の次は嗅覚か、と。
でも嫁は香水とか付けなさそうだし無理がある…いちゃつき過ぎだし。
香りはアナスイのスイドリームのイメージ。


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