…いつからか …いつの間にか 初恋 『初恋の思い出』について語る、なんていう。 若い女性タレントの出ている番組にはよく有るコ−ナ−。 あたしは居間のちゃぶ台に肘をつきながら、そんなTVをぼんやりと眺めている。 『甘酸っぱい』だとか『切ない』だのといった言葉が飛び交う画面の向こう側。 …思わず。 少し離れた所で、やっぱりぼうっと雑誌を読んでいる葉を見た。 『初恋の思い出』 ――コイツにも、あるのかしら。 そんなの。 …あろうが無かろうが、別にどうでもいいのだけれど。 ……でも、やっぱりよくないらしくて。 きいてしまった。 「あんたの初恋っていつなの?」 と。 TVを見ていなかった彼には、唐突すぎる話題だと思ったわ。自分でも。 その証拠に。 鳩が豆鉄砲くらったみたいな顔をして、葉があたしを見てる。 「なんだ?いきなり」 そう言う葉は、少し動揺しているようにも見えた。 あたしは、いつもの調子で無理矢理押し通す事にした。 「…いいから、答えなさいよ。いつなのよ?」 「………」 暫く考えるような素振りをしてから、葉が言った。 「…わからん」 「わからん、って…」 なんだか間の抜けたその答えに苛付いてしまう。 「覚えてないの?」 苛立ちを隠さずに尋問を続けるあたしに、少し逃げ腰になった葉が答える。 「…いつ、なんてそんなの解んねぇよ。…いつの間にか…その、…そうだったんだから…」 「…?」 言いにくそうに言う葉の顔が、急激に赤く染まっていくのを見ながら、彼の言葉の意味を考える。 …それって。 彼の初恋は未だ進行形だってことで。 つまり…? じっと顔を見つめると、葉は慌てた様子で目を逸らした。 「……バカね」 嬉しさと照れくささで火照ってくる顔を隠す為にTVのほうへ向き直る。 番組はまだ、同じ話題で盛り上がっている。 「あなたの初恋は?」 『あたしも、初恋はどっかの音楽ばかり聴いてるユルイ男の子よ』 心の中で告白。 ――そろそろ『じゃあ、お前はどうなんよ』って、葉がきいてきそうだけど。 …絶対、教えてやらない。 |
ルヴォ発表以前の物。二人は物心ついた頃からの幼馴染み同士。 いつから「恋」に変わったのかなんて、本人達にもわからない。 |
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