いつの頃からか、そうなってしまった。 ねだられるままに毎年渡すようになった、チョコレート。 こんな菓子ひとつであたしの抱えてる何が表せるというのだろう、と少し馬鹿らしく思わないでもないけれど、単純なくらい素直に頬を緩ませるあんたを見るのは、悪くない。 『アンナ』 心底嬉しそうに言うと、口へほうり込む。 『アンナ、ありがとう』 小さな塊を摘み上げる、その指先を見るだけで、あたしの心臓は落ち着かなくなる。 『アンナ』 だって、わかっているから。 その後にあたしに向けられるあんたの眼差しが、いつもよりもっと優しいってことを。 抱き寄せられて、ふわり包まれる香り、重ねる口づけの、甘ささえ。 知っているから。 もう覚えてしまっているから。 あんたから戻ってくる甘さを思えば、ひとりでに顔が熱くなる。 そんな自分の事も、馬鹿らしいくらいに単純だと、思わないでもないけれど。 そうなってしまった。 いつの頃からか。 044:バレンタイン |
照れ屋な嫁様からのチョコをゲットする為に、葉さんは毎年メチャメチャ頑張ってると思います。 06.02.15 |
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